正会員の吉川です。 2025年10月31日に香港で開催されたHKNOG 14.0、および11月4日から6日にマニラで開催されたPeering Asia 7.0に参加しましたので、その様子をレポートします。
なお、2年前開催されたPeering Asia 5.0にも当団体のメンバーが参加しております。 Peering Asia 5.0についてはこちらのレポート Peering Asia 5.0参加レポート をご覧ください。
参加した目的
これまで複数回ピアリングイベントへ参加してきましたが、リーチャビリティ向上を狙いとしたピアリング交渉及び議論や発表を通したインターネットコミュニティへの貢献を目的としていました。 今回はそれに加え、香港や台湾、シンガポール等を視野に入れた海外新拠点設立のための情報収集や調達交渉を第一目標として臨みました。特にPeering Asiaの直前にHKNOGが開催されたこともあり、香港の情報収集に特に力を入れました。
HKNOG 14.0
HKNOGは、日本におけるJANOGのように、香港におけるインターネット運用技術や情報の共有・議論を行うNetwork Operators’ Group(NOG)のイベントです。
これまでフィリピンのPhNOGや台湾のTWNOGに参加してきましたが、各地域のNOGごとに特色は大きく異なると感じています。 PhNOGはフィリピン国内のインターネット事業者の運用レベル底上げを主目的としており、APNICやRIPE NCC等の専門家を招き基礎的な知識を学習する機会が多く設けられていました。 TWNOGは学生や若手エンジニアの比率が高く、NOGの運営や議論そのものに若い世代が積極的に参加する活気あるコミュニティという印象でした。
それに対し今回のHKNOGは、より高度で最先端の技術トレンドに焦点が当てられている点が印象的でした。AIインフラ、高帯域ネットワーク技術、BGPセキュリティ、高度な監視・計測手法、実験的な学術ネットワークの取り組みなど、各トピックにおいて先進的な技術セッションが多く行われました。
また、HomeNOCと関わりのある方とお会いすることもできました。 HomeNOCの活動内容である「個人へのトランジット提供」から着想を得て、香港で同様にトランジットサービスを提供している方です。 7年ほど前の連絡の履歴も見つかるなど、思いもよらないところから香港との縁を感じることができました。 まさにオフラインで現地に足を運んだからこそ得られた収穫でした。
会場ではその場で撮影した写真をAIでイラスト化し、10分ほどでパスケースを作成してくれるユニークな企画もありました。 イベント翌日には香港市街を1日案内していただくなど、現地の皆様の温かいホスピタリティに迎えられ、非常に有意義かつ楽しい時間を過ごすことができました。
Peering Asia 7.0
HKNOGに続き、フィリピン・マニラへ移動してPeering Asia 7.0に参加しました。 Peering Asiaはアジア太平洋地域のISP、コンテンツ事業者、データセンター事業者などが一堂に会し、相互接続に関するビジネスミーティングを行うイベントです。 メインとなるピアリングミーティングのほかにも、インターネット技術に関するセッションや、最新のトレンド・基礎知識を学ぶためのWorkshopも開催され、商談と技術交流の両面で非常に濃密な場となっています。
今回は3日間で計14件のミーティングをセッティングしたほか、Workshopやセッションへの参加、Peering Personalsでの登壇、Socialでの交流、さらにはHomeNOCマニラ拠点のメンテナンスと、充実したスケジュールとなりました。
Day.1
初日の午前中は、インターネット技術に関するWorkshopが開催されました。 ピアリングの基礎的な仕組みから、アジア地域特有のインターネット事情まで幅広いトピックで構成されており、最新の動向をキャッチアップする良い機会となりました。
午後からはPeering Meetingが始まりました。 この時間は、各事業者と1対1でピアリングや相互接続、サービス導入に関する交渉を行います。 初日は2つの事業者と交渉を行い、その両社からピアリングの承諾をいただくことができました。 特に、規模の大きな事業者はバイラテラルピアリングの条件として最低トラフィック量などの基準を定めていることが多いのですが、当団体の活動内容や、教育的・非営利的な目的を説明した結果、例外的に承諾いただけるケースも多々あります。 この日も、通常は容易にピアリングを行わない事業者様に承諾いただき、活動についても深く理解し応援していただけました。 長年活動を継続してきたからこそ得られた信頼の証だと感じており、非常に嬉しく思います。
Day.2
2日目は1日9つのミーティングを行いました。 2日目は香港の事業者と多くミーティングを行い、ピアリングに加え香港拠点新設に必要な調達交渉を行いました。 新拠点の開設には、大きく分けて「IX接続」「ラック」「Local Loop」「国際接続」の4つの要素が必要となります。
- IX接続: コストの関係上、基本的にPNIを行わない当団体にとって、IXへの接続は必須です。香港には学術系のHKIX、外資系のEquinix、BBIXなどが存在し、それぞれの接続性やコストを検討する必要があります。
- ラック: IXへ接続するためのデータセンター内のスペースです。当団体は10Gまたは1Gでの接続が主であり、大型の機器は不要です。費用を抑えるためにも、フィリピン拠点と同様に3U、あるいはクオーターラック(1/4ラック)での契約がベストな選択肢となります。
- Local Loop: これが香港における難題の一つです。海底ケーブルの陸揚げ局から、IXが存在するデータセンターまでの接続コスト(Local Loop)が高額になる傾向があり、慎重な交渉が必要です。
- 国際接続: 香港・日本間を結ぶDIA(Direct Internet Access)や海底ケーブル等の接続性です。専用線(IPLC等)に比べてコストが低いDIAを軸に検討しており、これはフィリピン拠点と同様の構成です。
また、参加者が自らのAS(自組織)について短時間で紹介する「Peering Personals」にも登壇し、会場に向けてHomeNOCの紹介を行う機会もいただきました。
1日の最後にはSocialイベントが開催され、賑やかな音楽と雰囲気の中で参加者同士の交流を楽しみました。 ミーティングを行った事業者の方、休憩中に知り合った方、以前のイベントでお会いした方、そしてそのつながりで紹介いただいた方など、国境を超えて多くのネットワークエンジニアと親睦を深めることができました。
Day3.
最終日は午前にマニラ拠点のメンテナンスへ行きました。 コストの観点からメンテナンスのためだけに渡航することは難しいため、今回のようなイベント参加に合わせて現地作業を行うのが通例となっています。 今回は、前回のメンテナンスで完了しきれなかった配線作業の整理と、冗長経路として使用しているLTE回線の構成変更等を実施し、拠点の安定性を向上させました。
午後は再び会場に戻り、最後に3事業者とミーティングを行いました。
最後に
今回のHKNOGおよびPeering Asiaへの参加は、既存のピアリングパートナーとの関係強化はもちろん、海外新拠点の設立に向けて具体的かつ大きな一歩を踏み出す機会となりました。
オンラインでのやり取りが当たり前になった現在でも、現地に足を運び、顔を合わせて熱意を伝えることの重要性を改めて実感しています。 今回得られた情報と人脈を活かし、HomeNOCのネットワークをさらに広げ、コミュニティに還元できるよう活動を続けていきます。
最後になりましたが、現地でお世話になった皆様に感謝申し上げます。