正会員の吉川です。 2024年8月20日から22日にタイのチェンマイで開催された Asia Peering Forum 2024 に当団体より吉川と桑原の2人が参加しましたので、その様子をレポートします。私はピアリングイベント自体初めての参加で緊張しつつも非常に楽しむことができ、充実した3日間でした。
なお、去年の APF 2023 にも当団体のメンバーが参加しております。様子や APF の概要についてはこちらのレポート Asia Peering Forum 2023に参加しました をご覧ください。
APF のタイムテーブル
APF 2024 は全体で3日間開催されました。
Day 1
1日目の Registration and Welcome では受付を済ませた後、個別で顔写真を取りボードに貼り出されます。これにより、ミーティングの相手の顔を事前に確認することができ、行き違いを防ぐことができます。実際に、広い会場でミーティングする際に相手を見つけやすかった他、ミーティングの予定が入っていない場合でも挨拶をする際に非常に便利でした。
その後、9:00~18:00 は Meet your peers が開催されます。Meet your peers とは、事前に Meeting の予定を設定し各事業者と1対1で30分程度で話し合う場です。各 Meeting には個別のテーブルが割り当てられ、30分毎に入れ替わるという (ミーティングが多い事業者にとっては) 大変忙しいイベントとなっています。
Meet your peers の終了後、Equinix 様より夕食会に招待いただき、ミシュランレストランでディナーを楽しみました。タイ料理を楽しみつつ、主に日本より来られている他の事業者の方と交流を深めました。夕食会は交渉の場というよりも色々な方とお話をして交流を深める場という側面が強く、不慣れな私にこの業界についての教えていただいた他、タイでの観光の話に至るまで様々な話で盛り上がりました。夕食会にお誘いいただきありがとうございました。
Day 2
2日目は主にカンファレンスが開催され、ピアリングの話から今後のアジア太平洋地域の発展のためにどのような展開が必要か、ますます需要が高まっている AI 向けのデータセンターで高パフォーマンスを得るにはどのような設計が必要かなど、様々な視点のセッションが行われました。特に印象的だったのが、今後のアジア太平洋地域のハブに関する議論です。現在はシンガポール、日本、香港といった地域がハブとなっていますが、今後より広範囲で広帯域な通信を行うためにはさらなるハブが必要です。当団体では今年の7月に新しくフィリピンに接続しました。現在ハブとして期待されているフィリピンやインドネシアの他、今回の会場でもあるタイも候補として挙がり、今後の動向にも注目したいと考えています。
また、セッションの他にも Peering Personal という、自 AS の紹介を1分程度で行うプログラムも行われました。Peering Personal の後のミーティングで発表についてご質問いただける機会も複数あり、今後海外にも足を伸ばそうとしている当団体にとっても非常に重要な機会となりました。去年は桑原が行い、今年は私が発表を行いました。Peering Personal 自体初めての機会だったこともあり、非常に緊張しましたがなんとか話し切ることができました。また、大勢の人の前での発表は緊張しますが自分の考えを伝えられる貴重な機会でもあり、このような場所が好きなんだなと改めて感じました。

2日目もこのあと Peering Social と言われる懇親会が開催され、立食形式のディナーを楽しみました。こちらでは、APF の参加者の多くが出席され、海外の事業者の方とも様々な話をすることができました。様々な国の参加者が出席されているため、各国の IX やピアリングの事情といった興味深い話をお聞きすることができました。
Day 3
3日目も1日目と同様に1日中 Meet your peers が開催されます。2日間のハードな日程をこなし、体力面でもかなりハードでしたがなんとか最後までやりきることができました。全ミーティングを終え、帰路につかれる方も多く、我々も16時にミーティングを終え日本へ帰国しました。
Meet your peers の様子
本イベントの最大の目的でもある Meet your peers について、より詳細にお伝えします。さきほども述べました通り、Meet your peers は各事業者の方と1対1でお話する事ができる非常に貴重な機会です。我々は到達性の向上やきめ細かい経路制御を目的に接続している IX でバイラテラルピアリングを行う交渉をさせていただきました。他の事業者ではピアリング交渉以外にも今後の事業の展開等の話し合いのためにミーティングを設定されている場合もあるようでした。
今回は6つの事業者とミーティングを行い、内5つの事業者とピアリングの合意に至りました。特に、当団体の非営利で実験的に運用し幅広い学習機会を提供するといった目的に共感してくださる事業者の方が非常に多く、トラフィック要件を満たすことができていない場合でもピアリングをしていただける機会もありました。私は今までメールでのピアリングのお願いしか経験したことがなかったため、直接会って良い関係を築けるよう話し合える機会は非常に大きな意義があると強く感じました。
Meet your peers の他にも、ミーティングの合間に休憩できるラウンジがあり、そこでお話させていただいた事業者の方ともピアリングさせていただけることになる機会もあり、そのような部分もオフラインのイベントならではだと感じました。
また、わざわざ時間を割いていただいているので、事前に入念に相手方の情報を調べ、どのようなトラフィックが流れ、ピアリングによってどのようなメリットがあるのかを十分にまとめて行くことが重要です。ミーティングを終えて、調査の視点がまだまだ不足していることを感じました。今回のミーティングで相手方がどのような基準でピアリングを行い、どのようなことを知りたいのかを勉強させていただけることができたので、今後そのような部分を強化していきたいと感じました。
最後に、当然ほとんどのミーティングは英語で行われましたが、自分の伝えたいことを100%伝えることはできていないように思いました。業界で用いられる専門用語も多く、それに特化した勉強も必要であると感じました。
最後に
今回初めてピアリングイベントに参加しましたが、想像していた堅いビジネスの場というよりも、みなフレンドリーかつ寛容でイベントを楽しんでいるという印象を受けました。私自身も、様々な人と話す楽しさを感じ、非常に濃密な3日間を過ごすことができました。今後も積極的に参加してみたいと感じました。
参加前は完全な台本を用意し、説明する内容まで全て丸暗記しようとしていましたが、始まってみると次々と話が進み、台本を使う機会はありませんでした。事業者によって求められていることを理解し、その場その場で話を組み立てることが重要であると学びました。
至らぬ部分も多く、多くの方に教えて頂く機会が多くあり、大変お世話になりました。今後とも積極的に参加したいと考えておりますので、よろしくお願いします。

おまけ ナイトマーケットの様子
会期の前日にチェンマイに到着したので、その日の夜にナイトマーケットに出かけました。市内のいたるところで様々な商品が売り出されており、夜には昼とは違う活気がありました。
タイ料理は非常に辛いものも多く、食べるのに苦戦することもありましたが、タイ米を使った料理の他海鮮料理のラインナップも多く非常に楽しめました。
また、2日目の夜には Peering Social の後にムエタイの観戦にお誘いいただき、間近で大迫力の試合を見ることができました。
観光地としても非常に楽しい都市でした。
