APRICOT2024に参加しました

一般社団法人 Home NOC Operators’ Group 正会員の桑原です。
2024年2月21日から同年3月1日までタイ王国のバンコクにて開催されておりましたAPRICOT2024に参加をしてまいりました。
今回はその中での我々の活動について簡単に報告をいたします。

APRICOT2024

APRICOT (Asia Pacific Regional Internet Conference on Operational Technology) は、アジア太平洋地域のインターネットやその運用技術に関する会議です。
APNOG (Asia Pacific Network Operators Group Ltd) 主催のもと年1回、アジア太平洋地域の各国で輪番に開催されています。
様々な技術や運用のノウハウがテーマのプログラムに加えて、ピアリングに関するセッションも用意されており、同地域内の通信事業者を初めとしたインターネットに関わる多くの事業者が参加します。

又、同会場にてAPNIC (Asia-Pacific Network Information Centre) が主催するAPNIC Conferenceも開されており、こちらではAPNICの資源管理、運用ポリシーについての議論も行われております。

今回はAPRICOT2024及びAPNIC57がタイ王国のバンコクにて、2024年2月21日から同年3月1日までの10日間の日程で開催されておりました。
APRICOT2024 APNIC57についての詳細はこちらから

参加目的

当団体は設立より8年目となり、現在では100団体を超える接続利用者を有する、日本国内の個人AS※1としては比較的に活動を持続しているコミュニティであるかと思います。

我々の様な個人ASは非営利のコミュニティによって成り立っている都合上、その立場やインターネットコミュニティへの影響度といった場面で一般的な商用のASとは異なる特性を含みます。
しかし、我々個人ASの運用者もインターネットコミュニティの一員として、インターネットの適切な運用に関する様々な議論に参加する権利と責任を持っている立場にあることは自明です。
とりわけ今回のようなレジストリのポリシーフォーラムなどは直接的、又は間接的に我々自身にも影響がある重要な要素であり、そういった場への参加は非常に有意であると考えております。

また、引き続き当団体の活動理念や活動内容について広く紹介を行い理解をいただくことで、業界内で個人ASという文化の認知の向上を図り、健全なコミュニティの発展を目指す狙いもあります。

今回は全10日間の日程のうち2月27日から3月1日の4日間、当団体から私と理事の米田の2名が参加いたしました。

※1 ここでいう個人ASとは、個人、非営利団体、学生や社会人サークルなどで運営されているASで、ネットワーク技術の研究や勉強、自宅サーバ、などを目的とした非営利のASを指します。

PEERING PERSONALS

以前のAPF2023の記事でもご紹介しましたがPeering Personalsと呼ばれるプログラムがあります。
これは各事業者が順番にステージに立ち、それぞれおおよそ1分以内で自社の紹介を行うものです。
前回は初めてのことで大きな緊張がありましたが、今回は比較的落ち着いた演説を行うことができたように思います。

Peering Personalsの様子

OPEN POLICY MEETINGS

Open Policy Meetingsは、APNIC Policy SIG (Special Interest Groups) によって提供される、ポリシーの策定に係る議論を行う機会の一つです。

まずAPNICのポリシー開発プロセスについて簡単に説明を行うと、以下のようになっております。

  1. ポリシーSIGのメーリングリストにポリシー変更提案が提出され、同メーリングリストにて意見の交換が行われる
  2. Open Policy Meetingsにてリアルタイムに議論が行われ、また、参加者による賛否の投票が行われる
  3. ここまでの情報をもとに、SIGsの議長やAPNICのメンバーによってポリシーの導入の判断が行われる
  4. ポリシーが合意に達し、APNICのECの承認を得ることで、APNICの事務局によりポリシーの実装が行われる

この内Open Policy Meetingsは、提案に対するコミュニティ全体の賛否や意見を判断するのに有効な機会となっています。
今回のOpen Policy Meetingsでは4つの提案について議論が行われ、それぞれ以下の結果となりました。

prop-156:Assignment of Temporary IP Resources合意
prop-157:Temporary IPv4 Transfers合意に至らず
prop-158:IPv6 auto-allocation for each IPv4 request合意に至らず
prop-154:Resizing of IPv4 assignment for the IXPs中立多数より検討

※上記順序は公式サイトより参照

当団体のメンバーも、ポリシー変更提案についての意見及び投票への参加を行いました。
下の画像は、prop-156のIP資源の一時的な割り当てを認める提案について、当団体の米田がJANOGの会場ネットワークチーム経験の視点から意見をした際のものになります。

尚、ポリシーSIGのメーリングリストはこちらから購読できます。
また、当日のアーカイブはYouTubeで視聴できるようです。

意見の様子

最後に

アジア太平洋地域の事業者が集まるカンファレンスということもあり、非常に多くの国から事業者が参加していました。
相も変わらず英会話は勉強中という段階にあり、海外の他事業者の方と会話をするのもなかなかに気力を使います。
ただ、こういった場への参加回数を重ねることで段々と場慣れしている実感もあり、何より、国内に留まらない広い交流を持つことができる点は魅力的です。

繰り返しにはなりますが、我々個人ASの運用者もインターネットコミュニティの一員であり、その公益のため適切に振る舞う責任があります。
今後もこのようなカンファレンスやイベントに積極的に参画し、より良いコミュニティの維持、形成へ寄与できればと考えております。

最後に、今回お世話になりました多くの方々に厚く御礼申し上げますとともに、今後も何卒宜しく申し上げる次第です。

パネル前にて